アリゾナ州立大学 計算・情報・意思決定工学部 プリズム研究所 研究員(FORUM8 AZ 代表)
小林 佳弘

Yoshihiro Kobayashi,
Prism Lab. Research Associate, School of Computing, Informatics, and Decision Systems Engineering, Arizona State University/ FORUM8 AZ CEO & President


(写真は潟tォーラムエイト 提供)
(Photo provided by FORUM8)

 「第4回 国際VRシンポジウム」(2010年)における「World 16」最後の研究発表は、アリゾナ州立大学(Arizona State University:ASU)計算・情報・意思決定工学部プリズム研究所研究員の小林佳弘氏。同氏は、プリズム研究所での空間モデリング(spatial modeling)に関わる研究を中心に、学部生向けゲーム開発(game development)のコースも担当する。

 その傍ら、世界の建築および都市デザインを専門とする大学研究者がVR(Virtual Reality)利用に関する研究開発に連携して取り組むための組織化を発案。「World 16」(2007年の発足当初は「World 8」)プロジェクト(主催:潟tォーラムエイト)がスタートして以来、その代表を自ら務める。2009年からは、FORUM8 AZ LLC.の代表も兼務している。

 同氏が3次元リアルタイムVRソフトUC-win/Roadを初めて利用したのは、ASUが行政機関などと共同で実施した「デジタル・フェニックス(Digital Phoenix)」プロジェクト(2006年〜2009年)に参加していた当時に遡る。そこでは、アリゾナ州の州都フェニックス市における過去・現在・未来の3Dデジタルコンテンツを作成。その成果を基に、ASUのディシジョン・シアター(Decision Theater)で可視化やシミュレーションを行える3D環境の整備が図られた。そのうち、同氏は3D都市モデルの作成を担当。UC-win/Roadを利用し、建物や道路などのインフラはもちろん、交通流もVRで正確に再現している。

 また、World 16のプロジェクトを通じては、自動的に街をモデル化するツールの開発にフォーカス。イメージや道路ネットワークのポリゴン(polygon)さえあれば、建物や道路などを自動的に生成できるツールを実現してきた。それと並行し、アカデミックな研究分野としてプロシージャル・モデリング(Procedural Modeling:手続き型モデリング)に取り組む。具体的には、シェイプ・グラマー(Shape Grammar:形態文法)のようなルールベースのデザイン手法を自由曲面上に用いるアプローチを展開しているという。

 一方、学内の情報科学(computer science)関連の部門に移るまでは、パラメトリックモデリング(parametric modeling)、スクリプト言語を用いてプログラムを記述するスクリプティング(scripting)、デジタルアーキテクチャ(Digital Architecture)などの授業を担当してきた経緯がある。

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Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

World 16での研究に発する新たなツール群の開発へ

 小林佳弘氏は、今回のWorld 16で個人的にも非常に素晴らしい経験をさせてもらっている、との実感を述べる。

 一連の研究プロジェクトでは当然、成功例ばかりでなく、さまざまな失敗や困難を伴う。しかし、むしろそうした経験があるからこそ、新たなツールの必要性も顕在化。World 16 の活動に着手する以前にはなかった、ある種のセンスが自らの中に目覚めてきているという。

 そのような一つとして、同氏は3Dアニメーション・キャラクター(Animated Character)を作成するツールの開発を挙げる。

 UC-win/Roadはもともと、ビルトイン(built-in)された機能で3Dキャラクターの作成が可能だった。ただ、どうしても時間や手間が掛かったことから、それまでの2年間(2008年および2009年)にわたるWorld 16に当たっても、短時間にある程度の品質のものを簡易に作成できるツールが求められた。

 前年(2009年)のWorld 16ではこれを受けて開発した、UC-win/Road上で3Dアニメーション・キャラクターを作成するためのプラグイン(plug-in)・ツールについて発表。今回(2010年のWorld 16において)、ウィンストン・セーラム州立大学(Winston-Salem State University)アシスタントプロフェッサーのトーマス・ジェームズ・タッカー(Thomas James Tucker)氏による研究発表で触れられたアニメーション化プロセスでの利用はその好例、と位置づける。

 また、UC-win/Roadはフリーのレイトレーシング(ray-tracing)ソフト、POV-Rayファイルフォーマットの3Dデータを出力する機能も有する。とは言え、それにはすべてのデータを一括で出力してしまう難点があった。

 そこで同氏らは、道路や交差点など必要な要素のみを選択し、オートデスクの3ds Maxのような3D・CGソフトにPOV-RayデータをインポートしてVRモデルを自動生成できるプラグイン・ツール(PovrayToMax)も開発。これを利用することで、例えば、複雑な交差点を3ds Max上でレンダリング(rendering)し、ポスターを作成するといったフレームワークがそれまでより容易に可能になった。

 同氏は、これらを含め、UC-win/Roadと3ds Maxなど他の3D・CGパッケージを連携。VR都市モデルを生成・変換するためのツール群として、CityDesignツールの開発に注力。その実践的な利用を広げていきたいとの狙いを語る。





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「第4回 国際VRシンポジウム」<World16>研究発表12
The 12th Presentation of World 16, the 4th International VR Symposium

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By 池野隆(Takashi IKENO)
(掲載 12/2/2011)
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