ITSを核に進化する交通社会
ビッグデータ活用や自動運転実用化に向けた展開も



進むプローブ情報活用へのアプローチ

 近年のITS Japanによる取り組みで注目されるトピックスの一つが、プローブ情報基盤の検討だ。

 冒頭で触れたように、東日本大震災(2011年3月11日)が発生した当初、被災による道路交通網の分断に加え、道路交通の錯綜から渋滞が発生。そのような中で避難や救援、あるいは支援物資を輸送するためのルートに関する情報が求められた。

 その一方で当時、ITS Japanでは委員会ベースで自動車が走行することにより得られる走行位置の履歴など、さまざまなプローブ交通情報の活用について検討が進められていた。そこで同震災の発生を機に本田技研工業梶Aパイオニア梶Aトヨタ自動車鰍ィよび日産自動車鰍フ協力の下、ITS Japanは通行実績情報の提供に取り組んだ。

 被災エリアが広範囲に及んだこともあり、それぞれのフォーマットやパターンも異なるままに、ITS Japanでは各社から提供された情報を急きょ委員会メンバーらが手作りで加工。その成果についてはITS JapanのWebサイトを通じて同年3月19日から配信を開始。以降、毎日、前日24時間の通行実績情報を作成し、配信した。

 途中、国土地理院から岩手県、宮城県、福島県、国土交通省東北地方整備局および東日本高速道路梶iNEXCO東日本)各管内の通行止め情報も提供が可能になり、4月6日から4月28日まで毎朝9時30分に、前日0時〜24時の乗用車の通行実績を反映した通行実績情報と通行止め情報が同Webサイトから配信された。

 そうした経験を踏まえ、民間のプローブ情報に加えて、国および地域レベルの防災・交通に関わる多様な情報を共通フォーマットでデータ交換できる仕組み構築の必要性を提案。それを基に、災害時はもちろん、平常時にもユーザー(住民)が各種情報メディアを介しさまざまな情報を活用可能な「災害時/平常時ハイブリッド情報システム」について、ITS Japanでは検討を進めている。

 その際、まず共通基盤となるプラットフォームは国が整備。そこでは広域にわたり官民の複数主体が収集・提供する多彩な情報やサービスをカバーするため、それらの情報はクラウド上で集約。平常時にも災害時にも、必要に応じて誰もが自由にそこへアクセスし、情報を利用できる仕組み(地域ITS情報センター)とする構想が今春、提案されている。

 また、前述の東日本大震災直後に取り組まれた通行実績情報の配信と関連し、ITS Japanでは情報更新頻度のアップと対象車両拡大などのニーズについて検討してきた。さらに今年に入り、総務省の調査研究事業「災害時通行情報の流通・連携の促進に関する調査研究」に参画。前述の4社に加え、鞄立製作所、タクシープローブ実用化研究会、いすゞ自動車鰍ィよびUDトラックス鰍フ4社の協力を得て、「通行実績情報の配信実験」を今年2月に行った。

 同実験では東京、仙台・石巻、青森の3エリアを対象に、1時間(トラックは1日)を単位時間として乗用車の通行実績をどの程度収集でき、集約した情報をいかに表示・配信するか、地方自治体におけるそれら情報の活用可能性および課題について探った。実験期間中の2月24日には東京マラソンが実施されており、当該時間の当該エリアでは自動車の通行実績がなかったことが示されるなど、実態を正しく反映する通行実績情報の一端が確認された。こうした流れを受け、引き続き多くの関係機関と連携しつつ、システムおよび運用の在り方について検討を進めていくとしている。

具体化する自動運転・隊列走行

 ITS関連の話題で注目されるもう一つは、ITS Japanが参画する前述の社会還元加速プロジェクト(内閣府総合科学会議)の一環として、またエネルギーITS推進事業((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))として取り組まれた「自動運転・隊列走行に向けた研究開発」だ。

 これは、高速道路では隊列走行、一般道では省エネルギーの自動運転により、高効率な幹線物流システムを実現しようというもの。環境負荷の低減および省エネルギーの実現とともに、安全性向上や労働環境の改善の面からも効果が期待された。

 同研究開発は2008年度から5カ年計画で取り組まれ、今春、区切りを迎えた。この間に@隊列形成A車間距離制御B車線維持制御C衝突回避 ― などの要素技術やCACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)の実験車を開発。これらを用いて操舵制御や速度(車間)制御を行う自動運転・隊列走行の実験にも成功。そうした成果は今年2月に茨城県つくば市で実施したデモで公開されている。

 この研究開発および前述のプローブ情報活用へのアプローチに関しては、ITS世界会議東京2013でもその成果の公開と併せ、多面的な議論が展開される予定という。

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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