WM20140219ITSKSK

グリーンITSから路車連携による次世代ITSへ
ITS技術に関する直近の国総研プロジェクト研究

By 池野隆（Takashi IKENO）
（掲載 2/19/2014）


国土交通省国土技術政策総合研究所高度情報化研究センターITS研究室室長金澤文彦氏	国土交通省国土技術政策総合研究所高度情報化研究センターITS研究室主任研究官坂井康一氏

　「ITS（Intelligent Transport Systems：高度道路交通システム）スポットを使った交通の円滑化、電気自動車（EV）などエコカーの利便性向上のための技術、それから大型車による環境負荷の低減（といった課題の解決）が出来ないか、ということを目的に研究を進めました」

　国土交通省国土技術政策総合研究所（国総研）高度情報化研究センターITS研究室室長の金澤文彦氏は直近の、環境問

前・国土交通省国土技術政策総合研究所高度情報化研究センター情報基盤研究室主任研究官（現・(一財)日本建設情報総合センター建設情報研究所主任研究員）
勘角俊介氏

題と絡めて取り組まれたITS関連のプロジェクト研究（「グリーンITSの研究開発」（2010年度～2012年度））におけるターゲットをこう振り返る。

　国総研では、自らの研究方針に掲げる技術政策課題に対応。研究開発の目標を明確にした上で、当該研究に必要とされる分野の研究者が連携し効果的な成果に繋げるべく、戦略的かつ重点的に取り組む「プロジェクト研究」を展開している。

　これまで同研究室を中心に、ITSに関わる研究も複数実施されてきた。現在は冒頭で触れた研究を継ぐ、最新の研究（「道路インフラと自動車技術との連携による次世代ITSの開発」（2013年度～2015年度））が進行中だ。

先のプロ研をめぐる背景と狙い

　「自動車交通の環境負荷を削減する情報提供・収集システムの実現」という副題を冠し、高度情報化研究センター長をプロジェクトリーダーとするプロジェクト研究「グリーンITSの研究開発」がスタートしたのは、2010年度。

　二酸化炭素（CO2）に代表される温室効果ガスの排出量削減など地球温暖化問題への対応が迫られる中、日本国内の部門別ということでは産業部門（工場等）に次いで、長らく2番目（2011年度は業務その他部門（商業・サービス・事務所等）に次いで3番目）に多いCO2排出量を占めてきた運輸部門においても、その削減が強く求められてきた。

　国交省のWebサイトによると、日本のCO2総排出量（2011年度確定値で12億4,100万トン）のうち、運輸部門は約2割（2011年度確定値に基づくと、全体の18.6%）に達する。さらに、自家用乗用車と貨物車で運輸部門の8割強（同、全体の87.8%）を占めることなどから、自動車関連のCO2排出量削減への推進努力の意味は非常に大きいと考えられた。

　そうした事情を背景に同プロジェクト研究では、ITSの活用により、CO2排出量の削減をはじめとする環境負荷の低減に主眼を置きつつ、道路交通の円滑化を目指す、との方針を位置づけている。

　その上で、具体化に当たっては、以前から研究開発が進められてきていた、狭い範囲ながら高速大容量の双方向通信が可能な5.8GHz帯DSRC（Dedicated Short Range Communication：スポット通信）を用いた情報提供・収集システムや新しい通信メディアなどを利用するITS技術を活用。冒頭でも触れたように、1）渋滞などによる環境負荷を削減するための自動車交通の更なる円滑化・効率化、2）環境負荷が少ないEVやプラグインハイブリッド（PHV）などエコカーの利便性を向上させるための走行支援、3）環境負荷の大きい大型車にフォーカスした環境負荷の削減 ― という3項目から成る研究目標が設定された。

　そこには、2012年度までの3カ年にわたって取り組まれる同研究の成果を全国に展開。それにより、自動車交通の円滑化を図るとともに、道路利用者の利便性を向上。併せて、運輸部門における環境負荷削減への寄与に繋げようとの、その先の狙いが込められた。