「当初、何もないところから『こういう形で情報を回していけば効率化するだろう』という机上の考えで始めていったのが、実際に10年、15年と運用してくる中で問題点もだんだん浮き彫りになってきた、ということだと思うのです」

(一財)日本建設情報総合センター 標準部長
秋山 実 氏
 (一財)日本建設情報総合センター(JACIC:2012年4月1日から一般財団法人)により設置された「建設情報に係る標準化ビジョン策定懇談会」が「建設情報に係る標準化ビジョン」を策定したのは2000年5月。これを受けて同年10月、産学官の専門家から成る「建設情報標準化委員会」が組織された。

 以来、11年を経過。その間に、同委員会は2008年度から「社会基盤情報標準化委員会」に改称されている。

 同標準化委員会ではその主な成果として、CALS/EC(公共事業支援統合情報システム)に必要な各種電子納品要領やCAD(Computer Aided Design)データ交換標準(CADデータ交換標準コンソーシアム(SCADEC)から作業を継承)、情報共有システムの機能要件などの策定に携わってきた。

 ただ、そうした過程で「将来こういう使い方もあるだろう」といった期待が先行。過大なスペックが形成されてきた面は否めない、とJACIC標準部長の秋山実氏は振り返る。

 実はそれらの標準類が実際に適用されてくる中で、社会基盤情報そのものは当初想定したほど多様な利用には至っていない。その割に細かな規定がなされたことで、作業者側の負担感ばかりが増大。一方で、国から地方へとCALS/ECが段階的に展開されてくるとともに、改めてとくに規模の小さな地方自治体の実情に即した標準のあり方が求められてきている。

 同標準化委員会は2001年度以降、「建設情報に係る標準化ビジョン」の趣旨に則りつつ、三箇年ごとに標準化目標やその実現に向けた活動計画などから成る推進計画を策定。現在は第4次に当たる「社会基盤情報標準化推進計画2010‐2012」が運用されている。

 現行計画期間の半ばを経る中で、社会基盤情報標準化の現状、そこでの課題、今後の展開方向などについてJACIC担当者に聞いた。
CALS/ECの枠組み構築の流れと新たな課題
 建設省(当時)は1995年、「公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)研究会」を設置。同省直轄事業を対象とする建設CALS/ECの構築に向けた本格的な調査・研究がスタートしている。

(図はJACIC提供)
 それまでは専ら紙ベースでやり取りされていた、調査・計画から設計、施工、維持管理という公共事業のライフサイクルにわたって発生する各種情報を電子化。さらにネットワークを通じ、業務のフェーズをまたぐ関係者間でそれらの情報を交換・共有・連携して、有効活用しようというCALS/EC。そうした仕組みを構築し公共事業の業務プロセスを改善する先に、生産性向上やコスト縮減を実現する、とのターゲットが描かれた。

 建設CALS/EC研究会は、1996年度に「建設CALS整備基本構想」を策定。2010年度を最終目標年度に、「21世紀の新しい公共事業執行システム」(CALS/EC)を確立するための整備目標が設定されている。

 CALS/ECを具体化するにあたり、同省は1997年度、同基本構想に沿って2004年度までに整備すべき具体的な実施計画を示す「建設CALS/ECアクションプログラム」を策定。2001年度には省庁再編を反映し、「国土交通省CALS/ECアクションプログラム」により旧建設省および旧運輸省の取り組みを統合。その後は「国土交通省CALS/ECアクションプログラム2005(AP2005)」(計画期間は2005年度〜2007年度)、次いで「国土交通省CALS/ECアクションプログラム2008(AP2008)」(計画期間は2008年度〜2010年度)が逐次策定されている。

 とくにAP2008は、基本構想でCALS/EC実現の目標年度と位置づけられた2010年度までをカバー。@入札契約書類の完全電子化による手続きの効率化A受発注者間のコミュニケーションの円滑化B調査・計画・設計・施工・管理を通じて利用可能な電子データの利活用C情報化施工の普及推進による工事の品質向上D電子納品化に対応した品質検査技術の開発ECALS/ECの普及 ― という6目標を通じ、ICT(情報通信技術)を活用した建設生産システム(社会資本監理システム)を構築する、との基本方針が設定された。
  (次ページへ続く

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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転換点に立つ社会基盤情報の標準化
国から地方への展開、震災復興、新たなニーズも視野
By 池野隆(Takashi IKENO)
(掲載 4/8/2012)
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