社会基盤情報標準化の取り組みとその変遷

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

 JACIC内に設置され、その標準部が事務局を務める社会基盤情報標準化委員会(以降、略称「標準化委員会」)。冒頭で触れたように、同委員会の活動の基本となるのが「建設情報に係る標準化ビジョン」(以降、略称「標準化ビジョン」)だ。

 同ビジョンでは、建設に関する情報の標準化を推進することで、21世紀初頭の建設分野において「円滑な電子データ流通基盤の構築」と「統合的な電子データの利用環境の創出」を実現。それにより建設分野全体の生産性向上を図る、としている。その具体的なアプローチとして標準化委員会は発足(2000年)以来、CALS/ECを支える標準類の整備をメインに活動してきた。

 その際にベースとなるのが、同委員会が標準化ビジョンに基づき三箇年ごとに設定する推進計画。2001年に最初の「建設情報標準化推進計画」(計画期間は2001年7月〜2004年6月)が策定されて以来、第二次推進計画(同2004年7月〜2007年6月)、第三次推進計画(同2007年7月〜2010年6月)を経、現行の「社会基盤情報標準化推進計画2010‐2012」(同2010年7月〜2013年6月)が運用されるに至っている。

 その間、2009年には委員会内に組織された建設情報利活用グランドデザイン検討タスクフォースが「社会基盤情報の利活用のために」をまとめている。これは、蓄積される社会基盤情報の利活用促進を狙いとし、ICTの最新動向などを踏まえ、社会基盤情報の整備・利活用・更新・保全の各場面で課題となる事項を整理。「社会基盤情報の価値を活かすための11の提案」を示したもの。各提案項目に合わせ、標準化委員会自らが検討すべき具体的な取り組みや技術も提示している。

 標準化委員会がスタートした当初、その中で産学官が連携し、CALS/ECで使われる標準類を議論しつつ決めていく、という流れが形成された。しかしその後、それらについては国交省が自らつくっていく形へと移行してきた。

 そこで現行の標準化推進計画の策定に当たっては、「CALS/EC地方展開アクションプログラム(全国版)」(2001年、国交省が策定)に沿い徐々にCALS/ECの裾野が広がってくる中で、電子納品されたデータが必ずしも再利用に繋がっていない反面、国のスペックをそのまま地方へ適用するには過大な面がある実情を考慮。国交省のみを対象とするのではなく、都道府県や市町村などのニーズにもマッチした、もう少し柔軟で広範にカバーできる標準類を目指す取り組みへと転換した。

 とくに市町村をターゲットとし、より容易に電子納品対応できるよう見直していこうとの考え方を反映。@データや情報の標準化指針だけでなく、標準化された情報の管理方法や利用方法まで視野に入れた、一貫性のあるEnd to Endな検討を行うA確実に標準化すべき部分、標準化が推奨される部分などの区別が明確な、柔軟な適用を可能とする標準を開発するB標準などを新規に開発するだけでなく、既存のデータ標準、情報利用・管理環境を柔軟かつ積極的に利用することで、円滑な移行、効果の早い見える化を実現するC地方自治体や民間のニーズをいっそう積極的に取り入れる一方、普及状況や現場での課題・問題点のモニタリングを通じ、確実にフィードバックを得て活動内容を見直し、併せて普及活動も積極的に行う ― という4つの活動方針を掲げている。

 具体的には、細かい利用を想定した電子納品に関する国交省版の要領・基準に対し、地方自治体のニーズがどこにあるかを精査。それを基にオーソライズする形で従来の電子納品要領を見直す。たとえば、市町村が電子納品を導入するに当たってはPDFやCSVのような扱いやすい形式から始め、その後、データ再利用に適したSXF(Scadec data eXchange Format)やXML(Extensible Markup Language)の形式に移行するようにしていく。あるいは電子納品の際、CAD製図基準への対応に関するエラー修正が多く発生し、作業者の負担感を増す原因になっていることから、相互運用性に影響のない範囲でCAD製図基準を見直す ― などのアプローチを秋山氏は当面の主要な取り組みとして挙げる。

(図はJACIC提供)
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 こうしたプロセスを経、CALS/ECの仕組みとして当面必要とされたフレームワークはある程度形成。それ以降、新たなアクションプログラムなどは策定されておらず、国交省直轄事業を対象とするCALS/ECは定着した、通常の行政ベースで進められる方向にある。

 ただ、国に続く都道府県、政令市、中核市、市町村におけるCALS/ECはまだそのレベルには達していない。それらについては、これからも引き続きより使いやすい形の仕組み構築を推進していく必要がある、と秋山氏は解説する。

転換点に立つ社会基盤情報の標準化

国から地方への展開、震災復興、新たなニーズも視野

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