Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

FSEGで開発された「EXODUS」と「SMARTFIRE」
グリニッジ大学火災安全工学グループディレクター 教授
エド・ガレア

Ed Galea,
Professor, Director Fire Safety Engineering Group, University of Greenwich


(写真は潟tォーラムエイト 提供)
(Photo provided by FORUM8)
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 こうしたFSEGの活動の中から、航空宇宙産業をはじめ、構築環境(built environment)、海洋環境(marine environment)、鉄道環境(rail environment)といった領域への研究成果の適用が進展。それが、複雑な構造を有し、かつ囲われた各種空間内で人の避難行動や移動をシミュレートするソフトウェア「EXODUS」の開発に繋がっている。

 同ソフトはこれまでに、@構築環境における避難モデルの作成に使われる「buildingEXODUS」A大型旅客機の設計で使われる「airEXODUS」B客船や艦艇の設計で使われる「maritimeEXODUS」C多様なシミュレーション結果を工学的なVR環境の中で再現する「vrEXODUS」 ― という4バージョンが整備されてきた。

 ガレア教授はそのうちbuildingEXODUSを例に、避難流動のみならず、どのように人々が歩行者環境の中で動き、歩き回るかを研究でき、安全性や快適性、効率性を考慮した多様な構造物の設計が可能になる、と説く。また、米国の連邦鉄道管理局(Federal Railroad Administration:FRA)向けに近年進められている、列車内における避難や人の動きを検討するための鉄道バージョン(「railEXODUS」)の開発にも言及する。

 FSEGで開発してきたもう一つの成果が、CFD技術に基づく「SMARTFIRE」。これは、複雑な構造の空間内で火災や煙がどのように広がるかをシミュレートするもの。同氏は、これにより高度な燃焼モデルや有毒ガスの発生モデルを作成し、火災の広がりや有毒生成物の発生・拡散のプロセスを容易に予測できる、と同ソフトの特徴を述べる。
 「避難の研究と火災のシミュレーションに関する私たちの取り組み、そしてそれら2つのアプローチを結び付けてVR(Virtual Reality)に反映し、火災やその他の惨事に巻き込まれるという緊急事態の人々の行動をどのように検討しているか、お話したい」

 Virtual Design World Cup実行委員会(実行委員長:池田靖史・慶応義塾大学大学院教授、スポンサー:潟tォーラムエイト)が主催する「Virtual Design World Cup(VDWC) ― 第2回 学生BIM & VRデザインコンテスト オン クラウド」の表彰式の一環として、英国グリニッジ大学火災安全工学グループ(Fire Safety Engineering Group:FSEG)ディレクターのエド・ガレア教授が2012年11月21日、品川・コクヨホールで講演。火災や避難のシミュレーションを通じた工学的な安全・安心と効率性の研究について、自身の最新の取り組みなどを交えながらその考え方を解説した。
By 池野隆(Takashi IKENO)
(掲載 2/18/2013)

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Report on the Special Lecture at the 2nd Virtual Design World Cup
火災や人間行動力学への注目、FSEG組織化へ
Forum8-1
WMVR
第2回 Virtual Design World Cup特別講演リポート

火災解析、避難解析の最新研究とケーススタディ
The Latest Research on Fire Analysis and Evacuation Analysis and Case Studies

 ガレア教授は講演の冒頭、FSEGが1986年に設置された背景に関連し、英国マンチェスター国際空港(Manchester Airport)でのボーイング737による火災事故(1985年)に触れる。これは同機が離陸し始めた直後にエンジンから出火、結果的に55人もの死者を出す惨事になったことで知られる。当時、この件で同氏がとくに関心を持ったのは、なぜそれほど急速に火が広がったのか、飛行機自体は墜落したわけでなくダメージがさほど大きくなかった中でなぜそれほど多くの犠牲者を出したのか、ということだった。その謎に迫りたいとの思いが、火災や人間行動の力学研究に自ら深く関わる契機になったと振り返る。

 これらの研究は広範な領域にまたがるため、FSEGには火災エンジニア(fire engineer)や数値流体力学(Computational Fluid dynamics:CFD)の専門家、心理学者、数学者、ソフトウェアエンジニアなど30人前後の常勤研究者が参加。環境をモデリングする独自のソフトウェア開発に共同で取り組んでいる。

 また研究に当たっては、人間が災害時に実際、どう行動するかを出来るだけ正確に理解することが重要になる。そこで、数理モデル化(mathematical modeling)や実験解析(experimental analysis)の手法を採り入れながら、避難流動ツール(evacuation dynamics tools)の開発にフォーカス。このツールを利用し、複雑な構造の空間内での避難流動や歩行者行動(pedestrian dynamics)、あるいは通常の状態での人々の動きをシミュレートすることを目指した。併せて、燃焼や火災、煙の広がり方、あるいは消防(fire suppression)に関する研究を実施。9.11米同時多発テロ事件(2001年)以降は、国土安全保障(homeland security)に関する取り組みも展開。テロによる惨事にも安全な環境の提供に資するべく、これらのモデリングツールをいかにデザインし得るか、検討を重ねている。
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