建設業のための情報通信技術のトレンド ― 過去、現在、そして今後
Trends in Information and Communication Technologies for Construction: Past, Present, and Future


BIMをめぐる新たなニーズと課題

 こうして市場での利用が広がる中で、BIMに関するニーズも次第に変化。焦点は、ソフトウェアやデータ標準などのBIM技術から、いかに各社がこれらの新しい技術を使って仕事をするかというBIMプロセスへシフトしてきた、とフローズ教授は指摘。関係標準とともに、IPDのマニュアルやBIMの利用ガイドなどが多くの国々で整備されてきている、と語る。

 また、多対多のデータ交換から、皆で単一のプロジェクトモデルを共有する相互運用の考え方に移行しようというIFCに向けた初期のビジョンについては既に触れた。

 そのような狙いを反映し、前述のヘルシンキ工科大学のプロジェクト(2001年〜2002年)では多様なソフトウェア間でデータ交換を試行。ソフトウェアの組み合わせに応じたデータ共有の可能性やデータ交換上の問題点などが浮かび上がってきたとする。

 では現状はというと、実際には複数の独立したBIMモデルが並行して展開。データ交換は非常に選択的で、例えば建築のBIMモデルから構造のBIMモデルというように通常は一方通行でなされているのが実情、と同氏は述べる。

 それでも、2011年〜2012年に実施されたカナダでの調査から、多くは2Dや3Dのシンプルな形状ながら、建築や構造など主要なモデル間を中心にデータ交換自体は着実に増加。BIM利用の面でも、単一のBIMモデルを共有する形には至ってないものの、対面的なディスカッションなどでBIMモデルが使われている。これについては、やはり前述の病院プロジェクトの例からも、データ交換ではないにせよ、プロジェクトチームのメンバーが定期的に一堂に会する中で、BIMモデルがコミュニケーションや情報共有に活用されているという。

 同氏はこれらを踏まえ、BIMの相互運用あるいはデータ交換は行われているが、制約も多い。適切なデータ交換は戦略的に重要だが、クリアすべき難問も残る、との見方を示す。

BIMの普及評価と現状

 BIMの技術や普及の現状をどう評価するかは、何を指標にするかで大きく異なる。そこで、フローズ教授は英国で開発された「BIM成熟度モデル(BIM Maturity Model)」の考え方に着目する。

 これは、BIM利用の成熟度について4段階に分類。「Level 0」では、平面のCAD(flat CAD)を基本とし、3Dデータは扱わない。「Level 1」は2D・3D CADモデルを主に可視化に使うが、チーム内でのデータ共有はない。「Level 2」はエンジニアリングやマネジメントなどの有用なデータを含む本来的なBIMモデルを実際に使用し、チーム内でデータ共有が行われる。そして、「Level 3」は統合型BIM(integrated BIM)あるいは「iBIM」と称されるもので、BIMモデルが実際に共有され、プロジェクトのライフサイクルを通じて統合される、というもの。これらのレベルは、各段階の概念に応じた多様なタイプのデータ標準やデータ交換とも関連づけられる。

(画像はトーマス・フローズ氏 提供)
(Images provided by Thomas Froese)

Exploring New Trends: Information-oriented Strategy and Technologies in Civil Engineering, Construction, Transportation and Environment

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